米国視察(5)建築現場!!
近づきました。
見学ツアーの最後に行った、建築現場のレポです。
見学先の最後の一棟は、待ちに待った工事現場です。
高性能と言っても、空調のいらない時期に完成邸ばかりを
見てもなかなかピンと来ませんので・・・
見学したのは、上の写真の真ん中のオレンジ色の建物。
構造を除いて、ほぼ全てを改修している現場です。
何度か書きましたが、欧米は住宅の寿命が長いからか、
中々新築には出会えませんでした。
こんな狭小地に小さい足場を建てて外壁も塗り直しています。
反対から見るとこんな感じ。半地下と1・2Fの三層構造です。
サッシは勿論断熱・気密仕様です。
先日ご紹介した展示会と同じグラスファイバー製。
中に入って、説明会・・・と、飲み物が配られ始めました。
なんと、ビール(だけ)。皆でビールを飲みながら説明を聞いて、
建築中の建物内を見学です。日本ではあり得ないですね~。
私も連日の飲食で胃腸が疲れていましたが、ついつい戴いて
しまいました。(おいしかったです)
天井を見上げると、ビールの泡・・・ではなくて、
現場発泡ウレタン断熱材が吹き付けられています。
これは、日本でも使われている硬質ではない100倍発泡。
あれ?WUFIでシミュレーションしたら100倍の方が
水蒸気侵入の可能性が高いのでは。
と聞くと、硬質ウレタンはフロンガスの問題があって
使えなかったとのこと。日本ではノンフロンのものも
ありますが、アメリカでは調達できないのでしょうか。
(そんなことはないと思いますが、詳しく聞けず)
壁は、高性能グラスウールの吹き込みで2×6の
構造いっぱいに詰まっていました。
この外側は構造用合板ですよね?と質問すると・・・
アロハを着た説明員の方が、おもむろに吹き込み口から
手をズボッ!!と。う~ん。これも日本ではあり得ません。
アメリカ、豪快です。
場所ごとに色々と検討して断熱材を使い分けているようです。
南側の屋根は、現場発泡ウレタンの下にさらにロックウール。
右の灰色のものは断熱ではなく、防音のための
ボード状の繊維(座布団の中身のようなもの)が入っています。
半地下に降りると、地面に潜っている部分だけ
断熱材を替えていました。
条件別にシミュレーション・検討しているようです。
そして、もうパッシブハウスにはつきものと思える熱交換機。
早い段階からダクトは構造内に入れるからか、本体も入っています。
岡山県南の気候でもメリットが出にくい熱交換器ですが、
サンフランシスコのような穏やかな気候で、モトが取れる
のでしょうか?と疑問に感じるのですが、パッシブハウスの
会議・見学会を通して、もう付けるのがアタリマエという雰囲気です。
さて、断熱気密以外にも、構造も興味深いものでした。
1Fは大広間を構成するために、鉄骨の梁を這わせて、
ツーバイのスタッドを渡していました。
半地下では、LVLという積層材で上部を支えていました。
ということで、パッシブハウスの現場の見学会は終了しました。
完成邸・工事中ともに見学して思ったことは、日本でも
十分できるレベルで、キチンと事実を認め、検討し、
施工すれば、元々技術においても施工精度においても
負けないようなことがキチッとできるのでは、いうことです。
アメリカでも、まだ性能の低い家が沢山あり、環境対策を
きっかけとしてパッシブハウスという新しい動きがありますが、
日本でも人の命の大切さやエネルギー問題に
気持を向ければ、出来ることだと思います。
一つ問題と思うのは、日本は商品の表に出ていることと
裏に隠している(見せていない)ことのギャップが
大きいことです。
材料や製造段階や加工段階を見ると消費者として
ショックを受けるような話が食品でも何でもあります。
住宅も同じで、そこは供給側の意識が問われます。
これだけ世界中の情報が瞬時に得られ、日本の現状の
問題点も業界内では徐々に言われ始めています。
ちょっと骨抜きかも知れませんが、2020年の断熱
義務化も住宅業界にとっては大きな変化の波です。
それらのことに目を向け、創り手がビジネスに傾きすぎず、
家の本質を忘れないようにすることさえできれば、
欧米に負けない住宅業界になれるのではないでしょうか。
(勝ち負けではありませんが、最近あまりにも「欧米の住宅が
良くて日本はダメ」という工務店向けのセミナーや勉強会が
多すぎて、疲れて来ました。日本の住宅、ガンバレ!!)
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