生きることをバラで飾る

2020/11/02
なにやらキザなタイトルを書いておりますが、自宅のリビングに転がっていた、高校の現代国語の教科書に書いてある言葉でした。

 

教科書の裏表紙には、仕事中によく見るデザインが。

 

「暇と退屈の倫理学(國分功一郎)」という、哲学的な文書が掲載されていました。

 

そこに登場しているのは、ウィリアム=モリス。

これまで何度この名前を当社の見学会や雑誌・チラシなどで使わせてもらったことでしょう。

コスミック・ガーデンの住宅でも随所に登場する壁紙やカーテンの植物柄をデザインした人物です。

 

いちご泥棒や

 

ブラックトーンなど

 

壁一面や、

部屋全体に使うことも良くあります。

完成邸に入った時に、ウィリアム=モリスの壁紙は、空間の質を上げるような力がとても強いと感じることもあります。

 

こんなデザイナーがなぜ哲学者の随筆?に載っているのか。

教科書に引用されているのは数ページだけでしたので読んでみました。

 

ウィリアム=モリスはイギリスの思想家であり、社会主義者でもあったようです。

そして、資本主義の台頭により革命が起こり「豊かな社会」が形成されたときに、イギリス社会は消費社会の提供する贅沢品にあふれたけれども、人々の生活が少しも「飾られていない」ことに強い不満を抱いていた、とのこと。

産業革命によってもたらされた大量生産品が生活を覆うことが我慢ならず、芸術を特権階級から解放し、民衆の生活の中にそれを組み込まねばならないという強い意志があったと書かれています。

そして、実際に「アーツ・アンド・クラフツ運動」という活動によって、生活に根差した芸術品を提供すること、日常的に用いる品々に芸術的な価値を担わせることを目指したそうです。

 

その活動によって生み出された様々な芸術品やデザインが今でも残っており、現代の人々の生活を飾ることにも使われている、素晴らしいことですね。

生活を飾る」というのは、忙しく働き、家に帰ってもテレビやスマホばかり見ていると想像することもない概念かも知れませんが、目まぐるしく生きていると忘れがちな、「心豊かな生活」を思い出させてくれる言葉ではないかと思います。

 

教科書の文章を引用しすぎるのは良くないかもしれませんが、結びの一部をご紹介します。

 

人はパンが無ければ生きていけない。しかし、パンだけで生きるべきでもない。バラも求めよう。~(全部写したいですが、以下略)

 

出典の書籍はこちらです。

暇と退屈の倫理学 増補新版(2015年刊)

 

最近CMの背景などでもたまにモリスのデザインを見かけることがあります。

「生活を飾る」ことが見直されていたら嬉しいですね。

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