高気密高断熱について

高気密高断熱はG2で十分。基礎外断熱は「シロアリのリスク」に注意!

高気密高断熱住宅とは、家中の隙間を減らし、断熱性能を高めることで外気温の影響を受けにくくした家のことです。
夏は涼しく、冬は暖かく、一年中快適に過ごすことができます。

高気密高断熱住宅
断熱気密
壁や床に「断熱材」を入れて外気の影響を受けにくくする。夏の暑さはカットして冬の室内の暖かさは逃がさない。家の隙間をできるだけ無くし、家の中と外の空気の循環を止めることで、室温を保つ。

真冬にセーターだけで外出すると風を通して寒いですよね?でも、上にウインドブレーカーを着ることで熱が逃げにくくなります。
これが断熱と気密の関係です。両方を兼ね備えてはじめて高気密高断熱住宅と呼べるのです。

外の暑さや寒さの影響を受けにくく、夏は涼しく冬は暖かく過ごせます。高騰し続ける電気代を削減しながら、1年中快適に暮らせます。

家中の温度差がほぼ無いことから、リビングは暖かいのに浴室やトイレが寒いといった温度差が少ないので心臓や血管に負担のかかるヒートショックのリスクが減少します。

※(左)部屋間の温度@コスミック・ガーデン社員宅(2022年12月計測)
※(左)湯船にお湯が無い状態

気密性が高いため、家の隙間からの花粉やPM2.5の侵入を防ぎ、換気フィルターで取り除くことでアレルギーにも有効です。同時に、結露の発生が抑えられるのでカビやダニが繁殖しにくくなり、ハウスダストなどのアレルゲンを抑えることもできます。

隙間から音が漏れず、断熱材も音を吸収してくれるので外の音が気になりにくく、家の中の音も外に漏れにくくなります。防音性に優れているので、ぐっすり眠ることができます。看護師、警察官、消防士や工場勤務の方など、夜勤や日中に仮眠が必要な職種の方にも選ばれています。

建物の窓や壁などから室内の熱がどのくらい外へ逃げやすいかを示す数値です。数値が小さいほど熱が逃げにくい(=断熱性能が高い)ことを表します。

その家の大きさ(床面積)に対して、どの程度のスキマがあるかを表した数値です。数値が小さいほど、家のスキマが小さい(=気密性能が高い)ことを表します。

高気密高断熱性能については、「UA 値」「C 値」の他に、「HEAT20(ヒートトゥエンティ)」「G1」「G2」や「ZEH(ゼッチ)」「BELS(ベルス)」「断熱等級」など、色々な指標で表現されるため、家づくりを始めたばかりの人には非常に分かりにくくなっている現状があります。UA 値とC 値は必ずセットが考える必要がありますが、UA値を軸にまとめると岡山県南エリア(6地域)では次の通りに表すことができます。

HEAT20(ヒートトゥエンティ)
建築関係の組織や企業、大学教授や専門家で構成された団体。日本を8つの地域に分けて、必要な家の断熱性能を数値化して評価。地域性が考慮され、同じUA値でもグレードが異なる。
例:UA値0.46の住宅 → 5地域ではG1、6地域(岡山含む)ではG2(断熱等級6)中国地方では、HEAT20のG1~G2 を目指せば十分に冬暖かくて夏涼しい家を作ることができます。
※6地域などの断熱地域区分
省エネルギー法の告示にて、全国各地が1~8地域の断熱レベルで区分けされています。岡山県南はほぼ6地域、県北の寒いは5地域(備前市など)・4地域(新見市など)が割り当てられています。
重要な点は、地域区分が異なると、G1,G2などの断熱のランクに必要なUA値が変わることです。

夏涼しく、冬暖かい、高気密高断熱を実現するために、次の3つに気を付けましょう。

チェックポイント!

①高気密高断熱性能に必要以上にコストをかけないこと(費用対効果)。

②断熱性能(UA 値)だけでなく、気密性能(C 値)を必ず確認すること。

③暖かさを実感できで、将来困らない断熱工法を選ぶこと。

中国地方では、HEAT20のG1~G2 を目指せば十分に冬暖かくて夏涼しい家を作ることができます。

断熱性能:Uᴀ値
目指す数値0.46~0.56程度
※HEAT20 G1~G2

そして、これ以上UA 値を良くする必要はありません。例えば、G3 まで性能を高めたとしても、数百万単位の追加費用に見合うだけの電気代削減効果は無く、費用対効果が非常に悪くなってしまいます。

断熱性能のグレードアップ費用年間の電気代の関係

HEAT20Uᴀ値G1からの
グレードアップ費用
年間の電気代G1との
電気代の差額
(年額)
G10.56253,320円
G20.46約50万円244,920円-8,400円
G30.26約320万円230,680円-22,640円
※HETA20 G2・G3へのグレードUP費用と年間の電気代の関係

※モデルケース:岡山県南部(6地域)、約35坪、オール電化住宅、太陽光発電無し
※一般財団法人住宅・建築 SDGs 推進センター提供「住宅に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム」にてシミュレーション(https://house.lowenergy.jp/)

断熱性能のグレードアップ費用ライフサイクルコストの関係

冬に暖かくて夏涼しい家を作るためには断熱性能(UA 値)だけで判断してはいけません。必ずC値を確認してください。C 値は気密測定による実測で算出される数値で、気密性能の高さを表し、「家の隙間」をどれだけふさぐことが出来ているかということを表します。C 値は数値が小さいほど隙間が小さいことを表しており、気密性能が高くなければ思ったよりも寒かったり暑かったりするせっかくの断熱性能が役に立たない家になってしまいます。「全棟気密測定」を行っている会社を選びC 値は0.5 以下を目指しましょう。

気密性能:C値
目指す数値0.5以下

気密性能が低い場合は、壁の中に水蒸気が発生(内部結露)しやすくなり、普段は床材や天井材、壁材に隠れて見えない部分で結露が起きて構造部分が傷み、耐震性や耐久性が損なわれる可能性があります。

住宅会社への確認ポイント

UA 値(断熱性能)とC 値(気密性能)のどちらもチェックしましょう。

「C 値は公開していない」「C 値が1 以上」「全棟気密測定をしていない」場合は、いくら断熱性能(UA 値)のスコアが良くても冬に寒くて夏に暑い家になります。

高気密高断熱は工法の違いによって実感できる暖かさや将来的なリスクに違いが生じます。それぞれの工法の違いが何に影響するのかをしっかり把握しましょう。

床断熱工法は床のすぐ下に断熱材を敷き詰めて、床から断熱する方法です。これに対し基礎断熱工法は、建物の基礎コンクリート自体を断熱材で覆って断熱する方法です。

※床断熱と基礎断熱の床の表面温度の実測値(床断熱は室温とほぼ同温)

「床断熱工法」は、床の温度がほぼ室温と同じ温度でじんわりと暖かく、床下が常に空気が通って乾燥しているためシロアリにも強い工法です。
一方、「基礎断熱工法」は、「地熱の影響」で暖かいと言われていますが、実際に計測したところ、床面温度は室温と比べて3℃程度低いことが分かりました。また、建物の外に断熱材を設けた「基礎外断熱工法」の場合、断熱材が土壌に触れるため直接シロアリが侵入しやすくシロアリ被害のリスクが高くなります。

床断熱・基礎断熱で検索すると「基礎断熱の方が床温度が暖かい」と説明するサイトが多くありますが、実際に計測せずにイメージだけで説明していると考えられます。

特徴
床断熱工法・床面温度が室温とほぼ同じ温度でじんわりあたたかい
・床下空間が換気され乾燥するのでシロアリに強い
基礎断熱工法・中国地方では床下空間の冷気の影響で室温より3℃程度低くヒヤっとする
・最初の1~2年は基礎から蒸発する水分で湿度が高くなるため、結露によるカビのリスクがある。(床下換気装置が重要)
・特に基礎“外”断熱は、シロアリに非常に弱いリンク基礎断熱シロアリ対策フォーラム)
床断熱基礎内断熱基礎外断熱
床の表面温度室温とほぼ同じで暖かい室温から3℃程度低く冷たく感じる
シロアリ被害×
床下のカビ被害
施工の手間(職人の技術)

住宅会社への確認ポイント

床の断熱工法を確認しましょう。

スリッパを脱いで実際に足裏で温度を感じてみましょう(特に1階の床、日陰部分、タイル部分、キッチン、玄関など、家の色々な部分を歩いて確認しましょう)ヒヤッと感じた場合は、要注意です。

基礎外断熱の場合、シロアリ被害に対して対策はとられていますか?

万が一の被害に備えた補償制度や床下に散布する防蟻剤を確認しましょう。体に悪いものであれば避けなければいけません。発生しやすい環境になっていないか確認しましょう。

屋根裏空間を有効活用できるのは屋根断熱工法です。また、断熱に加えて屋根を二重化するなどの遮熱構造(コスミック独自、図の左)にすれば、夏の日射による輻射熱をより多く遮り、冷房費の削減に効果を発揮することができます。

小屋裏空間は、2階の半分未満の面積まで(ただし天井高140cm以下)部屋を設けることができ、容積に含まれないため容積率の限界以上の部屋を作ることができます。屋根断熱であれば、部屋や物置として活用することができ、また、2階から小屋裏に階段の設置が可能であれば、まるで3階のように利用することができます。

冬型・夏型の内部結露のメカニズム

断熱材で最も気を付けなければならないのは壁の中の結露対策(内部結露)です。
内部結露とは、家の中と外の温度差により、壁の中に結露が発⽣してしまう現象のこと。結露が発⽣すると住宅全体でカビが発⽣しやすい状況を作ってしまいます。
特に夏型結露を防ぐには、断熱材が湿気を通しにくい素材であることが重要です。

内部結露で生じた壁の中のカビ

※原因の多くは「夏型結露」。壁の中の湿った空気が冷房で冷やされて結露する。(写真:住宅検査カノム)

カビは、喘息やアレルギー症状を引き起こして健康を害するだけでなく、壁や柱、⼟台を腐らせてしまいます。内部結露は絶対に引き起こしてはいけない怖い現象です。
内部結露を抑えるためには、なるべく湿気を通しにくい断熱材を選びましょう。

ベーパーバリア施工とベーパーバリアが抱えるリスク

※ベーパーバリアにクギ穴がひとつでも開いてしまうと結露が発生

湿気を通しやすい繊維系断熱材(グラスウール・ロックウール等)の場合は、防湿気密シート(ベーパーバリア)の施⼯が必須となりますが、⾒えない壁の中に施⼯されているビニールシートに、クギ⽳が⼀つ空いただけで内部結露の要因となってしまうというリスクを⼀⽣抱えることになります。

代表的な断熱材別の特徴まとめ

断熱性能湿度の通しにくさコストベーパーバリア施工
発泡30倍硬質ウレタン必要無し
発泡100倍硬質ウレタン地域によって必要
グラスウール・ロックウール×必須
セルロースファイバー××必須

断熱材毎の湿気に対する強さ

チェックポイント!

UA 値(断熱性能)とC 値(気密性能)のどちらもチェックしましょう。

冬は暖かく夏は涼しい家をつくるには、UA 値だけでは判断せず、必ずC 値も確認してください。

床の断熱工法(床断熱・基礎断熱)をたしかめましょう。

スリッパを脱いで床の温度を足裏で実際に体感してみましょう。「ヒヤッ」と感じたら要注意です。

屋根・天井の断熱工法は、屋根断熱ですか?天井断熱ですか?

屋根断熱であれば、広々とした空間を屋根裏部屋としてそっくり使うことができます。

床・屋根・壁の断熱材には何を使っていますか?

湿気を吸収しやすいグラスウールなどの繊維系断熱材は、壁の中の結露対策を必ず聞きましょう。

Theories 1

  • 岡山(6 地域)ではUA 値は、HEAT20 の G1~G2 レベルで十分暖かい。G3はグレードアップ費用が回収できず費用対効果が悪い。
  • 断熱と気密は必ずセットで考える。全棟気密測定をしている住宅会社に絞りC 値0.5 以下を目指さないと夏暑くて冬寒い家になる。
  • 床断熱工法は、床暖房と勘違いするほど暖かくてシロアリに強い。気密施工に手間がかかりC値を下げるのが大変なため、採用する会社が少ない。
  • 屋根断熱工法であれば、屋根裏に「床面積」にカウントされない大きな部屋を作ることができる。