住宅にかかわる人たちがサボってきたから、多くの人が「暖かい」と「電気代が安い」を一度に解決できることを知らないんですね。

住宅にかかわる人たちがサボってきたから、多くの人が「暖かい」と「電気代が安い」を一度に解決できることを知らないんですね。
温熱環境研究のパートナーは全国のスーパー工務店

東京大学大学院工学系研究科建築学専攻  准教授
前 真之氏

専門分野:建築環境工学  研究テーマ:住宅のエネルギー消費全般  学生時代より25年間以上、住宅の省エネルギーを研究。健康・快適で電気代の心配がない生活を太陽エネルギーで実現するエコハウスの実現と普及のための要素技術と設計手法の開発に取り組んでいる。  所属学会:日本建築学会、空気調和・衛生工学会、日本太陽エネルギー学会  著書「エコハウスのウソ2」はAmazon民家建築の売れ筋ランキング1位(2023年2月時点)。

電気代が高くなっています。理由は輸入燃料が高騰しているためです。日本人はなぜか「電気代は高くならない」と思い込んでました。実際に請求書が届いてびっくりしたと言うのがネット上に溢れてる。熱い夏に冷房を我慢すれば熱中症のリスクがあり、寒い冬に暖房を我慢すればヒートショックのリスクがあるというのに節電を余儀なくされています。いま、日本の家は「性能」が足りてないんです。

※出典:東京大学前准教授作成資料

建築環境工学という分野で、室内の快適性とエネルギーの研究をしています。実際には色々あるんですが、結局、一般の人に見えるのは「温度」と「電気代」。この2つのバランスだけです。

「温度」を優先すると「電気代」が高くなって、「節電」すると「寒くて暑い」。日本では「しかたがない」と思い込んでるし、あっさり受け入れられちゃってるんですね。でも、実はそうじゃないんです。

日本では「暖かい」と「電気代が安い」を一度に解決できると思ってないんです。実際には「家の性能」が高ければ、家中くまなく暖かくて電気代も安いということができるのに。なぜそうなのか?それは「知らない」からなんですね。

※出典:東京大学前准教授作成資料

みなさんが電気代に困っているのは、住宅にかかわる人たちがサボってきたからです。建築業者はもとより、不動産屋も「住宅の性能」を口にしません。メディアもそういったことを報道しません。所管行政庁も高性能住宅を広めることをしてきませんでした。だから「暖かい」と「電気代が安い」を一度に解決できることを知らないんです。家は「デザインが良ければ良い」「住む場所が良ければ良い」ということだけになってしまっているんです。

※出典:東京大学前准教授作成資料

コスミック・ガーデンのような高性能な家を普及させようとすると割高になってしまいます。でも、建てた後の電気代やメンテナンス費が安くなるから、トータルで考えると実は安いんですね。そう考えれば、最初に高性能住宅を建てることは皆さんにとっても良いんです。

何よりも、しっかりとした、次の世代に引き継ぐ価値のある家づくりがすごく大事なんです。温度、電気代、に加えて、長持ちする、デザインも含めて価値がある家です。減価償却では木造住宅は22年で帳簿上の価値がゼロになってしまうけどそんなのは関係ない。高性能な価値のある家を作れば高く売れるというのを作らなければいけない。

脱炭素社会では、お金の流れが変わってきます。今まではズルしたほうが安くつきましたが、世界中で、石炭火力を割高にしたり、人権を痛めたり、搾取は許さない、という方向に行ってます。簡単に言うと、地球と人に悪いことは高くつき、良いことは安くつく時代になってきました。

今までのように建てては壊すことを繰り返すのははすごく負担なんです。世界では、住宅は次の世代に引き継ぐのが普通ですが、日本では車を買う感覚で家を建ててはつぶしています。だから、高性能な家を作る習慣がなかったんです。家の値段も今までが安すぎました。これからは大工も少なくなるし、資材の値段も上がるし、作っては壊しの家づくりの限界が来てるんですね。

※出典:東京大学前准教授作成資料

オイルショック以降、温度と電気代のバランスを上げていくにはこの3つが欠かせないと考えています。

  1. 断熱・気密
  2. 高効率設備
  3. 太陽エネルギー
※出典:東京大学前准教授作成資料

断熱・気密とは「熱」と「空気」の勝手な出入りを減らすことです。日本は得意じゃないんですね。そもそも断熱・気密があまり知られてませんから。

断熱については、本当は2020年から省エネ基準適合義務化(断熱等級4以上)が決まっていましたが、国交省の独断で延期となってしまいました(建築物省エネ法)。断熱等級4は最低限の断熱性能なので実はたいしたことは無いんですが。でも、すごく遅れてしまった結果、ペアガラスが入っているような断熱等級4の家は全国で13%しかありません。日本には、最低限の断熱を確保してない、寒い家がいっぱいあるということです。

※出典:東京大学前准教授作成資料

今頃、大騒ぎになって、あわててNHKが「家が寒い」ことをテーマとした番組(クローズアップ現代2023年1月17日(火)放送「実は危ない!ニッポンの“寒すぎる”住まい」)を放送しました。私も出演したのですが、あの番組で使ったサーモグラフィの画像の撮影には、相当コスミック・ガーデンさんに協力してもらいました。

※低気密低断熱の日本の寒い家。日本は家全体を温める発想が全くない。
(提供:前真之准教授)

国交省は22年前に断熱等級4を設定して以来ほったらかしにしてきたんですが、ようやく去年、2025年以降の義務化が閣議決定され、さらに断熱等級5・6・7ができました。これで温度と電気代のバランスが良くなります。等級4では温度が低い。等級5はマシにはなったけど少し力不足。私は等級6以上が良いと考えています。

※断熱等級別のサーモグラフィ。等級6以上は部屋中が同じ温度。
(提供:前真之准教授)

暖かい空気は上に昇ります。暖かい空気を漏らさないことがすごく大事なんですね。だから断熱性能を上げたうえで「気密性能」がめちゃくちゃ大事になってきます。

残念ながら日本の家はほとんど低気密。天井に隙間があるから暖かい空気が漏れてしまう。床にも隙間があるので外の冷たい重たい空気が入ってきてしまう。そうすると足元がめちゃくちゃ冷たい。コスミック・ガーデンさんと一緒に一般的な家を回ったんですが、床が本当に冷たかった。

※エアコンによる部屋の温まり方(低気密住宅は足元の空気が温まらない)
(提供:前真之准教授)

一緒に調査に行った家の中に、コスミック・ガーデンさんにリフォームの相談が来ていたけれど、結局、他の会社でリフォームをされたお施主さんのご自宅がありました。リフォーム後、コスミック・ガーデンさんに「めちゃくちゃ床が冷たいから見に来てくれ」と相談が来ていたので一緒に行ってみたんですけど、衝撃的でした。

リフォームしているから見た目はきれいなんですが、玄関からめちゃくちゃ寒いんです。室内に入ってみても何か非常に温度が低いんですね。電気カーペットのとこだけが暖かいんですが、他はまるで床に水を張ったかのように冷たい。特にキッチンカウンターの周りは本当に冷たい。いったい原因は何なのか、と。

※寒い玄関(左)、暖房器具以外の床が冷たいリビング(中)、床が水を張ったように冷たいキッチン(右)
(提供:前真之准教授)

床下を開けて見てみると、薄い断熱材は入っていたんですが、原因は空気の流れを止める「気流止め」が施されていなかったんですね。リフォームでは入れ忘れるところがたまにあるんですが、そうすると冷たい空気が隙間から立ち上ってしまうんです。断熱は義務化もあってこれから良くなっていきますが、「断熱は必ず気密とセットで」といつもお伝えしています。「気密無き断熱は無力」なんですね。

※床下の気流止めがなされず(左)、床下の冷気が床の隙間から侵入している(右)
(提供:前真之准教授)

少ない電気で冷暖房するためにはエアコンが良いです。その時に一緒に家中に空気を回す工夫をやらなければ、家の中で暖かいところと寒いところの温度差がついてしまいます。今問題になっているヒートショックは、家の中の温度差が大きいことが原因です。こういったことが全然解決できてないんですね。この辺りは、コスミック・ガーデンさんはうまくやられています。

※新しい家でも空調計画が無ければリビングと廊下やトイレの温度差が非常に大きい。
(提供:前真之准教授)

太陽光は、家の屋根で炭素ゼロの電気や熱を生み出せます。色々と言われることもありますが、やっぱり良いものだと思うので太陽光はどんどんやったほうがいい。問題が全くないわけではないですが、自分の家で電気が作れて、CO2の排出もなく、電気代が安くなるものは他になかなか無いですから。東京都も普及に力を入れてますね。(太陽光発電設置解体新書

なにより太陽光の良いところは自分で使えるところ。自家消費ができると高い電気を買わなくていいから、今は生活防衛ツールみたいな役割が大きくなってきています。

メンテナンスなど、問題が全くないことはないんですが、十分解決できる。やり方によってはタダで載せることもできる(PPAモデル)。電気の買い取りの値段がどんどん下がってきているのは設備の導入費用が下がってきてるから。昔は高かったけど10年ちょっとでペイできます。

※出典:東京大学前准教授作成資料

究極的には、冬温かく、電気代も安く、そんな暮らしを全ての人に届けたいと考えています。前の2つはもう解決できてるんですが、一番難しいのは「みんなに届ける」こと。断熱や太陽光をつけると「高くなる」と言われてしまうんですね。実際には、安普請(やすぶしん)な家を建てて電気代が高い家よりも、しっかりとした高性能な家を建てて月々の合計の支払いが安ければ何の問題も無いんですけどね。お客さんから見ると、住宅ローンも電気代も同じお金。合計値で見ないといけないのに、何故かそれぞれ別物として見てしまってるんです。

※出典:東京大学前准教授作成資料

最近は色々な動きがある。例えば金融。銀行も気付き始めている。琉球銀行が高性能住宅のローンには、金利優遇に加えて借入額を増やしている(琉球銀行ZEH住宅専用ローン)。例えば3500万円しか借りれない人が4000万円借りられるとして、500万円増えれば、断熱材も太陽光もできる。金利優遇とセットなので借入額が増えても総コストは軽減される。これが工夫。

電気代も下がるので、初めにしっかりした家を建てるのにお金がかかったとしても、月々の合計の支払いは下がる。銀行にしても電気代リスクが下がるから、ローン破綻も防げるので良いんですね。だからコスミック・ガーデンのように高性能な家を作っている工務店には、金利優遇や借入額を増やすように銀行がすればよいと思ってます。誰も損しませんから。ただ、電力会社は売上が下がってしまうけど笑。

国交省も高性能住宅に関する漫画(国土交通省住宅局『待って!家選びの基準変わります』)を描いて説明してます。いまだかつてなく踏み込んだ漫画ということで話題になってるんですね。

強調しているのは「ちゃんとした家を建てておけば、2030年を迎えても資産価値が残る」ということを。今までは初期コストだけ見て、「高い高い」といってたのに、「イニシャルコストがちょっとあがっても全然カバーできるよね」ということがはっきり示されています。いよいよ国も「断熱や太陽光」のこと「健康や快適になりますよ」と、あの国交省すら言い始めた。高性能はトータルでは安い、ということを。

※出典:国交省「待って!家選びの基準変わります」より高性能住宅の資産価値について。

もうひとつは不動産の問題。コスミック・ガーデンのようなちゃんとした家は高く売れるという仕組みが必要です。トヨタ車が売れるのは中古でも高く売れるから。家だって減価償却の22年で価値ゼロみたいな考え方だけでなく、耐震や断熱など家の価値をちゃんと査定に含んで高く売れるようにしなければいけません。これは絶対にやらなければいけない。鳥取県ではすでに始まっていますから(とっとり健康省エネ住宅

そもそも、2025年から断熱等級4が義務化(建築物省エネ法)されることが閣議決定されたので、それに沿っていない家は不適格になります。2030年にはさらに上の性能を義務化する話もあるので、基準ギリギリの断熱等級4で建てていては2030年には不適格になってしまいます。

まずはZEHレベル(断熱等級5)の家づくりを目指そうということなんですが、でも僕はZEHでは足りないと考えています。ZEHを超えて本当に暖かくて電気代も安心な家が良い。ハウスメーカーはZEHギリギリがほとんどですが、ZEHは等級5なので実はたいしたことないんですね。

※ZEH、HEAT20(G1~G3)、断熱等級とUA値の関係まとめ

「型式適合認定(ハウスメーカー)」の家はリフォームに困りますが、工務店の家は、誰でも直すことができます。後々長く使う、次の世代が直して使うことを考えると地域の工務店で建てるのが絶対に良いと思います。地域にお金も落ちて豊かになっていくと考えると、地域の工務店が頑張るのが一番いいと思います。

また地域密着の工務店は逃げられないですから、その中で施主さんと向き合ってしっかりやってきてるところが残ってます。だから地元のしっかりとした工務店に頼むのが絶対に良いと思います。良い工務店が地元に無いというのは厄介なことですが、コスミック・ガーデンのようにすごい勉強熱心な会社があるのであれば、そういうところにお願いできれば一番いいと思います。ぜひ、工務店の方には頑張っていただきたい。

コスミック・ガーデンさんは、藤井社長が物理をやられてたから、ちゃんと「実証する」という姿勢があるのが良いですね。たいがい、建築の世界は感性で根拠が無いことを言われる方も多く「断熱をすると木が腐る」なんて言う人もいますけど、コスミック・ガーデンは、実証主義でまじめにやられているというのが素晴らしい。研究を手伝ってもらう中で、非常にまじめな方たちと分かりました。

日本のいいところは、現場が優秀なこと。今までは、必死に現場の方々(工務店)が頑張って、意識あるお施主さんにご納得いただき、なんとかお金を出していただいて、断熱・気密の家づくりを続けてきたんです。金融とか不動産の仕組みをちゃんと整えれば、現場の優秀な家づくりのリーダーの方々が活躍できると思います。

今では「社会にとって何が問題なのか」、また「その問題を解決しなくちゃいけない」という動きが出てきました。そして「問題を解決できる時代」になってきています。だから、実は今から家を建てる人はある意味めっちゃ運がいいんです。

20年前だと理屈はあっても、高性能な建材は高かったから自腹を切ってやってました。今は値段も下がってお得になっています。あの国交省すらそう言っているんだから、やらないほうが損だってことを理解してほしいですね。

「高性能な家を建てたら実は得なんだ」という時代に、家を建てられる方は本当にラッキー。そのラッキーを間違いなく生かしてくださいということ。

SNSには変な情報がいっぱいあります。youtubeで勉強するのはすごくいいことなんだけど、正直、ネットの情報って素晴らしいものもあるけど、バランスが悪いものもいっぱいある。youtubeにはまりすぎてわけわからなくなっていく人も多いですね。

怖いのは、偏った動画を見ている人は、同じような人が見ている動画がサジェストされるので、どんどんはまりこんでいくこと。変なヘイトニュースにはまりこんで「あれはいけない」「これはいけない」という感じになってしまってる人もいらっしゃいます。

だから、むやみやたらと自分だけで勉強してしまうより、ある程度理解して、その先は信頼できるプロに任せるのも一つの方法です。実際にやっているプロの人の知見は大切です。プロの人は色々なバランスを見て考えてくれるわけですから。何事もバランスですよ、バランス。

その時に、お施主さんのためを思ってちゃんとやってくれる人と、残念ながらそうじゃない人がいるので、ちゃんと見極めたうえで、この人にお願いできると思ったら、プロとしてお任せする。

しっかりとした、信頼できる、私たちのことを考えてくれる人をちゃんと見つけたら、その人が、断熱や太陽光などもちゃんとできるように説明もちゃんとしてくれる。昔は「断熱気密はダメだ」なんて言ってた人が多くいたけど、その人たちは何の責任も取ってませんから。

コスミック・ガーデンさんは、お客さんのためになる家づくりをされているし、色々な課題をきっちり解決してるのはわかってるので、お任せして良いと思います。

※東京大学内の前准教授の研究室。前准教授が直接声掛けした全国6県の”スーパー工務店”が集まり、住宅の温熱環境計測の報告と意見交換をしている様子(2016年撮影)。”スーパー工務店”とは前准教授の造語で著書「エコハウスのウソ」で初めて使用された単語。
※サーモ画像の撮影風景。色々なハウスメーカーで建てた個人宅の皆様に協力していただいた。

<参考リンク>

・Maelab 前真之サステイナブル建築デザイン研究室 公式サイト

・前真之研究室東京大学建築学科 公式youtube