基礎・構造について

南海トラフ巨大地震に備えて震度6強でもビクともしない家づくりを

2022年1月、政府の地震調査委員会の発表によると南海トラフ巨大地震は40年以内に90%の確率で発生すると発表されました。岡山県の最大震度は震度6強、想定死者数は1000人以上1万人未満と予測されています。余震を含めると5~6クラスの強い地震が何度も発生することが予想されるため、震度6 強でも軽微な損傷で済む家づくりを目指すことで、命を守ると同時に修繕費用を最小限に抑えることができ、また損傷が大きい判定を受けると家に入れなくなり、避難所などでの生活を余儀なくされますが、その可能性も低くなります。

南海トラフ巨大地震 岡山県の被害予測
最大震度震度6強
想定死者数1000人以上1万人未満
※岡山県危機管理課予測

耐震等級は、地震に対する建物の強度を示す指標のひとつです。数字が大きくなるほど地震に強いことを表します。
ただし、「耐震等級3」の中身が2種類(簡易な計算と、精緻な構造計算)あるので注意が必要です。

等級
(低<高)
耐震等級1耐震等級2耐震等級3
耐震性能・建築基準法レベル
・数百年に一度程度の地震(震度6~7)でも倒壊・崩壊しない
・建築基準法レベルの1.25倍
・数百年に一度程度の地震(震度6~7)の1.25倍の地震でも倒壊・崩壊しない
・建築基準法レベルの1.5倍
・数百年に一度程度の地震(震度6~7)の1.5倍の地震でも倒壊・崩壊しない
大地震時の
建物の強度
大きく損傷しても倒壊・崩壊を避け命を守る一定の補修程度で住み続けられる被害を最小限に抑え、生命と財産を守る
建物一般住宅学校や病院など避難所となる建物消防署や警察署など災害の拠点となる建物

木造軸組工法では「耐震等級3」、木造枠組壁工法(ツーバーフォー・ツーバイシックス)では「耐震等級2」を目指しましょう。

木造軸組工法木造枠組壁工法
耐震等級32

※木造枠組壁工法は、※木造枠組壁工法は、木造軸組工法の1.25倍の強度のため耐震等級2で同程度以上となります。

木造枠組壁工法はアメリカやカナダなどの北米で主流の工法で、極限の強度が求められる航空機用に開発された「モノコック構造」と同じ仕組みの頑強な構造です。

木造軸組工法が木の柱や梁などの「骨組み」の「線」で支えられているのに対して、木造枠組壁工法では、天井・壁・床全体で支えて「面」で受け止める構造となっていることから、地震に強く、また、密接度が高いため「防火性」と「気密性」が高いことが特徴です。

木造枠組壁工法木造軸組工法
支える個所天井・壁・床の「六面全体」骨組みの「線」
特徴地震・火災に強い 断熱性が高い国内シェアNo.1で対応できる会社が多い
木材の量木造軸組工法の約1.5倍以上

2016年4月の熊本地震では、震度6強以上が4回、うち震度7を2回記録しました。建築基準法において「ごくまれに発生する」と想定する「大地震」が何度も発生し、全壊約8300 棟、住宅被害16万棟という大きな被害が出ました。

熊本県の日本ツーバイフォー建築協会会員社のアンケート結果によると、回答のあった2940棟の木造枠組壁工法住宅においては住宅全壊・半壊は0棟で、97%が「当面の修理が無くとも居住できる状態」であったことがわかりました。木造枠組壁工法(ツーバイフォー・ツーバイシックス)の地震に対する強さを証明しました。

平成28年熊本地震ツーバーフォー・ツーバイシックス
2,940棟
震度7 ×2回
震度6強×2回
震度6弱×3回
震度5強×4回
震度5弱×8回
合計19回
全壊・半壊0棟 2,852棟(97%)が当面の補修無しで住める状態

〈過去の大地震〉
タイプが異なる過去の大震災でも木造枠組壁工法(ツーバイフォー・ツーバイシックス)の地震に対する強さは証明されています。

日時地震名調査棟数当面の補修無しで住める状態の家(割合)
平成7年1月17日阪神・淡路大震災8,948棟8,659棟96.8%
平成17年1月13日新潟県中越地震725棟721棟99.4%
平成23年3月11日東日本大震災20,772棟19,640棟95.0%

木造枠組壁工法は火の通り道となる床や壁において、枠組材などが、ファイアーストップ材となって空気の流れを遮断し、上階への火の燃え広がりを防止します。このため「省令準耐火構造」に該当する住宅が多く、普通の木造軸組工法と比較すると保険金額は半分程度になります。

※2×4のファイヤーストップ構造

省令準耐火建物その他の木造割引率
火災保険21,024円41,220円51.0%

省令準耐火建物(T構造)の保険料シミュレーション
※岡山県、木造110㎡、10年一括支払い、S社で見積もった場合

なお、一般的に、木より鉄の方が火に強いと思われがちですが、木は燃えると表面に炭化層が生じて内部まで火が通りにくくなり、強度が低下しにくい素材です。これに対し鉄は550℃を超えると急速に強度が低下。鉄骨系住宅は家全体が一気に崩れ落ちることもあります。1200℃前後まで温度が上がるといわれる火災では、実は木の家は鉄の家よりも安全と考えています。

※大きい断面の木材は、表面が燃えても内部はしっかりしている。

最高等級の耐震等級3の建物であれば「地震に強くて安心」というわけではありません。
最も重要なのは「しっかり構造計算をしているかどうか」です。構造計算は、壁量だけでなく、部材や基礎まで詳細な計算で強度を検討するため、安全性を確保することができます。ただし、構造計算は2 階建ての一般住宅では義務化されてなおらず、また非常に難しい計算であることから採用する住宅会社は少ないのが現状です。

同じ耐震等級3でも「性能表示計算(壁量計算)」と「構造計算」の2種類が存在し、しかも強度が異なるという驚きの事実があります。
下記のグラフの通り、「性能表示計算による耐震等級3」の家は、「構造計算による耐震等級2の家」よりも地震に対する強度が弱い場合もあります。
「構造計算をしていますか?」必ず確認しましょう。

基礎にはベタ基礎、布基礎の2 種類があります。ベタ基礎の方が地震に強くシロアリに強い工法と考えています。

ベタ基礎布基礎
耐震性
シロアリ・湿気対策

基礎の強さは次の2つで見分けることができます。

① 構造計算をした基礎かどうか(基礎も構造計算の対象)
② 基礎の高さや厚み、基礎の立ち上がり部分の総延長(※写真オレンジ部分)、鉄筋の太さや配置間隔の幅、地中梁の有無を比較してみる

※オレンジ色部分の面積が大きいほど、住宅を支える面積が広い
チェックポイント建築基準法
立上がり幅120mm
基礎の高さ400mm
根入れの深さ(地中部分)240mm
鉄筋(主筋)直径13mm
鉄筋(腹筋 はらきん)直径9mm
鉄筋(あばら筋)直径9mm
あばら筋の間隔300mm
地中梁(地中に設ける梁)有無

チェックポイント!

基礎の工法は、ベタ基礎ですか?布基礎ですか?

ベタ基礎の方が、布基礎に比べて地震に強く、湿気やシロアリ被害を防ぐ効果も高いとされています。

構造の工法は木造軸組ですか?ツーバイフォー・ツーバイシックスですか?

構造見学会があれば参加してみましょう。完成見学会では、2階の床を踏みしめながら沈み込むような感覚が無いか確認してみましょう。

基礎や構造に、会社独自の補強の有無はありますか?

同じ工法でも、会社独自の仕様、強化内容によって地震や火災に対する強さが違うことがあります。

耐震等級は?構造計算はされていますか?

算出方法も聞いてみましょう。よく耳にする壁量計算という簡易な手法は、構造計算ではありません。

耐震実験の実績は?実験結果もたしかめましょう。

地震への備えは、最も重要な性能です。南海トラフ巨大地震にも負けない基礎・構造の強さを追求しましょう。

Theories 3

  • 南海トラフ地震の発生確率は40年以内に90%(2022年1月、政府の地震調査委員会発表)。命を守り、被災後も住み続けられる基礎・構造が必要。
  • 木造軸組工法では耐震等級3、木造枠組壁工法(2×4:ツーバイフォー、2×6:ツーバイシックス)では耐震等級2を目指す。
  • 基礎は、ベタ基礎が地震に強くてシロアリにも強い工法。
  • 木造枠組壁工法(2×4:ツーバイフォー、2×6:ツーバイシックス)は世界標準の工法で地震と火災に強く、保険料も安くなる。
  • 地震に対する強さをより確実にするには「構造計算をした上での耐震等級か」の確認が必須。
  • 「耐震等級」という言葉は同じでも、「性能表示計算(壁量計算)による耐震等級3」よりも「構造計算による耐震等級2」の方が強度が高い場合が多いと言われている。