WUFIのご紹介その2(地域編)
今回は、以前ご紹介をさせて頂いたWUFIの続きを書かせて頂きます。
前回から間が空いたので、最初のご説明をご覧になられたい方は
前回の記事をご覧ください。→ WUFIのご紹介その1
さて、今回は、地域によって、壁内の湿度がどの程度変わるのかを
検証した結果をご紹介したいと思います。
まずは、コスミックの標準の壁構造で、岡山市内でシミュレーションした結果です。
これは前回もご紹介したものです。
前回と同じで、緑色の相対湿度が80%(赤い点線)を超えるかどうかが
防露措置の判定基準となりますが、上図の通り、問題ありません。
ちなみに、このWUFIに入っている岡山市の気候データでは、
最高気温35.9度、最低気温マイナス4.0度でした。
さて、それではこのコスミックの壁構造を、岡山県新見市の千屋に持って行ってみましょう。
千屋は、ここです!! スキー場や温泉もある「いぶきの里」。いいところですよー。
気温は・・・
最高気温は29.9度ですが、最低気温がマイナス10.7度。実は仙台より厳しい条件です。
ここで、コスミックの壁をシミュレーションした結果は・・・
真冬の時期に、断熱材の中の相対湿度が85%くらいまで上昇しているようです。
これは、室内(右)から屋外(左)へ向かう水蒸気が、構造用合板の手前で溜まって
いるためで、構造用合板と現場発泡ウレタンの透湿抵抗の差が原因と考えられます。
この結果からは、コスミックの住宅を千屋のような気候の地域に建てるときは、
そのままの壁構造ではなく、断熱材の厚みを変更するなどの検討が必要と言えます。
(上記のグラフだけでなく、どれくらいの期間、どの程度の湿度になるか等の
細かい結果も出ているので、それらを見ながら対策を検討することになります。)
さらに寒い地域ということで、思い切って宗谷岬で試してみました。
ここにコスミックが住宅を建てられるかどうかはわかりませんが・・・
最高気温26.8度、最低気温マイナス16度。
風速も中間値で7.2m/秒・・・かなり過酷な条件です。
ここでの結果は、上図の通りです。断熱材の相対湿度が90%に到達しています。
千屋よりもさらに激しい状態ですね。
ちなみに、比較のため、上記の断熱材(40mm)と通気層(49mm)の部分に
グラスウール(89mm)を詰め込んでみました。場所は同じく宗谷岬です。
とんでもないことになってしまいました。相対湿度が上昇し、含水量も激増。
壁の中は水びたしの状態です。
グラスウールに恨みはありませんが、比べて頂くと、コスミックの断熱材が
かなり水蒸気の移動を抑えていることが分かって頂けると思います。
このままではグラスウールが不名誉になってしまうのですが、藤井社長も
ラジオで説明している通り、「繊維系断熱材を使うときには、防湿がとても大切」です。
ということで、室内(右)からの水蒸気の侵入を止めるため、
石膏ボードとグラスウールとの間に、防湿シートを入れました。
室内側からの水蒸気の侵入がないので、全体的にはよい状態になりました。
矢印の場所は、相対湿度90%になっているので、結露の対策は必要ですが。
また、上記は防湿気密シートで「完全に」防湿できている条件下での検証なので、
施工でシートに穴が開いていたりして水蒸気が侵入すると、ここまで
よい状態にはなりません。
では、宗谷岬の次は沖縄県の那覇市に移動します。
気候は、次の通りです。
最高気温32.7度。あれ?岡山市の方が3度以上高いんですね。私は行ったことがないので・・・
でも最低気温が10.9度。寒くもないですね。それほど過酷ではないのかも。
・・・と思いきや、降雨量がこれまでで最も多いようです。湿気への対応が大変そうです。
まずは、コスミックの壁で試してみました。
全く問題ないようです。
外が暑いので、外から中へ水蒸気の侵入がありますが、相対湿度を上げることなく
水蒸気が移動しているようです。
では、先ほどのグラスウールと防湿シートの壁で試してみます。
このような結果になりました。
外から侵入した水蒸気が温度の低い室内側へ移動する途中で、
防湿シートで止まっています。当然と言えば当然です。
このように、同じ壁構造でも、その地域の気候によって問題になったり
ならなかったり、相対湿度が上がる場所が違っていたり。
自然を相手にする難しさを感じずにはいられません。
・・・地域の違いによる差のご紹介はここまでとし、最後に、同じ地域でも
壁を建てる方向が影響するという例をご紹介して終わります。
上の方に、コスミックの壁を新見市千屋で検証して、相対湿度が85%程度に
なったという例がありましたが、壁の方向は、過酷と思われる北面に建てた
設定でシミュレーションしていました。
この壁を、同じ千屋でも、北面ではなく南面に向けてシミュレーションすると・・・
相対湿度は80%以下で、問題ありません。
壁を向ける方向だけでも、このような差が出ます。
実際の住宅の施工では、方向によって断熱材の厚みや壁の構造を変えることは
通常ありませんが、北面の壁だけは湿気が残ったり腐食が激しいお宅もあると思います。
南面は真夏の日射が強いので、遮熱を考えるくらいですから、
北面は温度差の考慮がもっとあってもよいのかもしれません。
このように、設定を変えて動かしていると幾らでも検証することが出てきます。
結果を整理しつつ、まとまったら、またご紹介させて頂きたいと思います。
今回も長くなってしまい、申し訳ありません。
最後まで読んで下さった方も、途中までの方も、
このページを開いて頂いた皆様、ありがとうございました!!
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