ZEHの違和感

2016/02/24
岐阜のセミナーでは、日本での省エネ住宅・ゼロエネ住宅(ZEH)

について、ある意味日本の先端を行っている話が聞けました。

 

日本の、特に現在の経済産業省の推し進めるゼロエネ住宅の考え方は、

断熱性能の高い建物に高効率設備をつけて消費エネルギーを減らし、

太陽光発電(事実上これしかない)で消費エネルギー以上の発電をする。

ここまで全てセットで「ゼロエネルギー住宅(ZEH:ゼッチ)」だよと

いうものです。

そしてこのような住宅を、「2020年に標準、2030年に平均」に

するというロードマップを描いています。

 

このゼロエネルギー住宅の考え方には、当初から違和感がありました。

1.建物の断熱性能を確保すること

2.高効率設備(エアコン・給湯器・換気設備・照明)を使用すること

3.太陽光発電をつけること

この3つを同時に必須にしています。

 

しかも、1はこれまで通り「設計上の断熱性能が高いこと」までしか

確認されません。現場のチェックもなければ、気密性能の気の字のもなし。

 

経産省さんに言わせると

「そんなの建てる側が自主的にきっちりやるべきでしょ」

「国交省が指導すべき内容でしょ」

ということなのでしょう。

でもできていないのが昭和55年からの省エネ基準の歴史です。

 

現実の断熱性能は骨抜きなまま、確実に設置が確認されてしまう

高効率設備と太陽光発電は必須。当然費用がかかります。

寒い家に高価な設備をつけて基準をクリアする「なんちゃってゼロエネ住宅」を

揶揄し、最近の建築業界では「メカメカZEH」と呼ばれています。

 

売ることとコストを最優先にするような住宅会社は、現場の施工レベルには

力を入れなくても、熱伝導率が高くて安い断熱材を沢山使い、高価な設備と

太陽光をつけることで「ZEH達成!!」と言うかもしれません。

それで補助金はもらえるし、家は売れる。

広告を疑わず鵜呑みにするような消費者は住み始めるまで区別がつかない。

まず、ゼロエネ住宅としてこの骨抜きで寒いメカメカゼロエネ住宅が認定され、

補助金が撒かれる。これが第一の懸念です。

 

そして、もうひとつの懸念。

もし本当に寒くないゼロエネ住宅にしようとすると、気密断熱施工にも

コストがかかり、さらに設備と太陽光でますます建物の価格が上がり、

手が届く人が少なくなります。そんな住宅を平均・標準にしていけるのか。

 

比較的貯蓄も少なく、これから教育費がかかる若い世代は、建物も、

設備も、太陽光もと全てを義務化されたZEHに手が届かないかも

しれない。そのとき、最優先すべきは、寒くない家のはず。

 

若い世代が幸せに暮らすためには、まず本当に性能のある寒くない

家を建てるべき。寿命が短く進化の早い電気設備や、初期費用がかかる

太陽光は、できるようになったときにする、そのときには本当のゼロエネ

住宅になれる、その準備ができた「ZEH Ready」な住宅を目指すべき、

アメリカなどもそのような優先順位ですよ、というのが前准教授の話でした。

 

太陽光をつけられる層だけをターゲットにしたものよりも、全体の住宅の

レベルの底上げを目指すような施策に期待したいです。

 

実際にそのように感じている住宅会社は大変多いと思います。

私の稚拙な文章より、とても分かりやすく書かれている記事を見つけました。

ご本人からも「拡散よろしく」と許可を頂いたので、リンクしておきます。

住宅雑誌「Replan」編集長 三木様のブログへ

コメント

コメントする

コメントは日本語で入力してください。(スパム対策)

*

CAPTCHA